あたしは成熟を目指す

プログラミング、思索、読書などの遍歴をとりとめもなく

「私」の存在

曹洞宗南直哉さんの著作「善の根拠」によると、人間は「私」というものを持っている唯一の生き物であるという。はたして唯一の生き物であるかどうかはともかくとして、人間が「私」というものを持っていて、私というものを基準にして物事を観察し、考え、行動していることは確かだろう。

南さんの指摘によれば、人間は「私」というものを基準にしてしか物事を観察できないし、考えられないし、行動できないのだが、しかし、「私」というものは他者がいなければ存在しない、という。私がどれほどのものかは、いくら自分自身が自負していても意味がなく、あくまでも他者による評価の結果が、私を形成している。しかも、私を評価しているそれぞれの他者も、その個人においては、そのような他者から評価されるところの「私」に過ぎない。人間は本質的に自己決定できない、他者との関係の中に存在しているところの不安定で矛盾を抱えた存在なのである、という。